大学院生末松さんと三宅准教授の論文が、JBC誌にアクセプトになりました

「シアル酸認識受容体Siglecが脂質リガンドを認識することを発見」

Siglec (sialic acid-binding immunoglobulin-like lectin)は、主に免疫細胞に発現する細胞表面受容体で、糖鎖末端のシアル酸を認識して免疫応答を制御します。
我々は、Siglecが認識する病原性真菌の探索を行い、Siglec5とSiglec14が水虫の原因菌である白癬菌を認識することを見出し、生化学的解析によりトリアシルグリセロールと飽和アルカンがリガンドであることを明らかにしました。Siglecはシアル酸の他にもタンパク質リガンドを認識することが報告されていますが、いずれも親水性であり、トリアシルグリセロールや飽和アルカンのような疎水性分子を認識することは初めての発見です。Siglec5と14は他にも様々な脂質分子を認識し、特にカルジオリピンと5-PAHSAは強いリガンド活性を示すことが分かりました。また脂質リガンド認識に重要な疎水性配列をSiglecのN末領域に見出しました。これらの脂質リガンドはSiglec5を介して免疫細胞の活性化を抑制し、Siglec14を介して免疫細胞の活性化を促進しました。これにより、脂質リガンドがSiglecを介して免疫応答を変化させることが明らかとなりました。
本研究においてSiglecの新たな機能「脂質認識」が見つかったことにより、Siglecが動脈硬化や肥満などの脂質関連疾患に関与する可能性が示唆され、将来的には治療標的としての可能性も期待されます。

本研究は、佐賀大学医学部 膠原病・リウマチ内科(大学院生末松梨絵さん(H31修了)、多田芳史博士)、九州大学(宮本智文博士)、千葉大学(西城忍博士)、大阪大学(山崎晶博士)と共同で行ったものです。本研究成果は、Journal of Biological Chemistryにアクセプトになりました。