アメーバのマイトソームの進化と代謝経路’に関する論文がパブリッシュされました。

赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)は、ヒトの大腸に感染し、アメーバ赤痢を引き起こす寄生虫です。赤痢アメーバのミトコンドリア(マイトソームと呼ばれる)は極端に退化しています。一般的なミトコンドリアが持つ代謝経路を全て失っているため、機能は不明でした。これまでの研究により、赤痢アメーバのマイトソームが硫酸活性化に特化するように進化した、特殊なオルガネラであること(Mi-ichi et al.,PNAS.2009,Plos NTD,2011)、硫酸活性化によって合成される分子の1つが“コレステロール硫酸”であること、そして感染嚢子の形成を制御する重要な分子であることを見出だしました(Mi-ichi et al.,PNAS.2015)。

今回、マイトソーム内にある硫酸活性化経路と細胞質にある硫酸基転移酵素(コレステロール硫酸合成酵素を含む)とを結ぶ輸送体としてマイトソーム内膜上に存在するmitochondrial carrier family (MCF)を同定しました。MCFは硫酸活性化経路で合成された活性化硫酸を細胞質に運び、コレステロール硫酸合成酵素の基質として供給することを見出しました。MCFは硫酸活性化経路の基質であるATPも運びますので、MCFが硫酸活性化経路に重要な分子であることを示しました。

本研究は、愛媛大学、埼玉大学、感染症研究所と共同で行ったものです。本研究成果は、2015年9月発行の科学雑誌「Eukaryotic Cell」に掲載されました。

Evidence that the Entamoeba histolytica Mitochondrial Carrier Family Links Mitosomal and Cytosolic Pathways through Exchange of 3′-Phosphoadenosine 5′-Phosphosulfate and ATP

 

 

 

 

MCF

赤痢アメーバマイトソームにおける硫酸活性化経路

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