私たちは赤痢アメーバの環境耐性の形態であるシストの研究を行っています。
赤痢アメーバは、ヒトの大腸に寄生し赤痢アメーバ症を引き起こす寄生虫の1種です。ヒトへの感染は、感染者の糞便中のシストの経口摂取によって引き起こされます。大腸内に寄生した赤痢アメーバ(アメーバ運動する栄養体)の一部がシスト(固いキチン壁を持つ)へと形態変化し糞便中に排出されるのですが、その制御機構など詳細は不明です。
本論文では、シスト形成をしている細胞を電子顕微鏡解析によって経時的に観察することにより、シスト形成過程に生じる細胞内小器官の動的変化を明らかにすることに成功しました。
さらに、本論文は、電子顕微鏡観察に加えて我々が確立したフローサイトメトリー法による“シスト形成の細胞集団としての解析法”(Mi-ichi et al, Front Cell Infect Microbiol, 2018)を組み合わせることで、シスト形成過程に生じる動的変化をより詳細に示すことが出来ました。本成果は、未だに不目な点が多い、シスト形成の制御機構の解明に繋がることが期待されます。
本研究は、長崎大学(大学院生Eman Abdelazeem Abuelwafa Mousaさん、坂口美亜子博士、中村梨沙博士、濱野真二郎博士)、South Valley University(Abdella博士)と共同で行ったものです。本研究成果は、Parasitology誌に掲載されます。