見市講師の赤痢アメーバの含硫脂質代謝に関する論文がPLOS Neglected Tropical Diseasesにアクセプトになりました。

赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)は、ヒトの大腸に感染し、アメーバ赤痢を引き起こす寄生虫です。生活環は栄養体期とシスト期の2つに大別され、主な感染経路はシストの経口摂取です。

私たちは赤痢アメーバの硫酸代謝の研究を行っています。硫酸代謝は生物界に普遍的に存在する重要な代謝経路です。これまでに、赤痢アメーバの硫酸代謝が含硫脂質代謝に特化していて6種類の含硫脂質が合成されることを見出しています。そして合成される含硫脂質として、コレステロール硫酸と新規なfatty alcohol disulfatesを同定後、それぞれの機能解析を行った結果、fatty alcohol disulfatesが栄養体期の原虫の生存に、コレステロール硫酸がステージ移行であるシスト形成制御に必須な分子であること、寄生適応に寄与している可能性を既に報告してきました(Mi-ichi et al.,PNAS.2015, PLoS Pathogens. 2016, Mol Microbiol. 2017)。つまり含硫脂質は生活環を通じて重要な代謝産物であり、制御機構の解明および薬剤開発に応用するために含硫脂質合成に必須な酵素APS kinaseを標的とする阻害剤探索を開始しました。スクリーニングを行った結果、3種類の化合物が赤痢アメーバのAPS kinase活性を阻害すること、その結果、栄養体増殖およびシスト形成を停止させることを見出しました。さらに2種類については、ヒトの細胞の増殖に影響を与えないことから、選択毒性に優れたリード化合物となることが期待されます。

本研究は、鹿児島大学(石川岳志博士)、長崎大学(濱野真二郎博士)と共同で行ったものです。本研究成果は、PLOS Neglected Tropical Diseasesにアクセプトになりました。