見市講師の赤痢アメーバのシスト形成におけるキチナーゼの重要性を解明した論文がMicrobiology Spectrum誌に掲載されました。

見市講師の赤痢アメーバのシスト形成におけるキチナーゼの重要性を解明した論文がMicrobiology Spectrum誌に掲載されました。(Mi-ichi et al., Microbiol Spectr. 9(1). e00511-21.2021

私たちは赤痢アメーバの宿主間伝播の形態であるシストの研究を行っています。

赤痢アメーバは、ヒトの大腸に寄生し赤痢アメーバ症を引き起こす寄生虫の1種です。ヒトへの感染は、感染者の糞便中のシストの経口摂取によって引き起こされます。大腸内に寄生した赤痢アメーバ(アメーバ運動する栄養体)の一部がシスト(固いキチン壁を持つ休眠体)へと形態変化し糞便中に排出されます。シストは休眠状態の細胞であり、シスト壁に覆われることで、環境変化(宿主体外環境である乾燥状態、宿主の胃を通過する時の酸性条件下)への耐性を獲得しますが、シスト壁形成の分子機構については不明な点が多くありました。

今回、シスト壁の主成分の1つであるキチンの分解酵素であるキチナーゼの機能解析を行いました。最初にキチナーゼの新規阻害剤の探索を行い、1種類の新規キチナーゼ阻害剤を得ました。この新規キチナーゼ阻害剤でシスト形成を阻害すると、キチン壁が緩くなり、異常な形のシスト(つぼ型のシスト)が形成されてしまうことを見出しました。キチン壁が緩くなったことで、中のアメーバがアメーバ運動をしてしまい、つぼ型になると考えています。 以上のことから、赤痢アメーバのキチナーゼは正常な球形シストの形成に必須な酵素であることが明らかになりました。

本研究は、長崎大学熱帯医学研究所(坂口美亜子博士、濱野真二郎博士)と共同で行ったものです。本研究成果は、Microbiology SpectrumMi-ichi et al., Microbiol Spectr. 9(1). e00511-21.2021)に掲載されています。